第27話 コロナ感染症と生殖医療|山下湘南夢クリニック|藤沢市の不妊治療/体外受精

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第27話 コロナ感染症と生殖医療|山下湘南夢クリニック|藤沢市の不妊治療/体外受精

第27話 コロナ感染症と生殖医療

コロナ感染症が地球規模で猛威を振るっています。

 

日本でも緊急事態宣言が人口密集地域を中心に発令され、いくつかの業種に対して休業要請が出されました。

 

このような状況の中で、4月1日日本生殖医学会は妊娠中にコロナウィルスに感染した場合の胎児への影響が正確にはわかっていないこと、そして、妊婦さんに対する治療法が確立していないことから、体外受精/顕微授精した受精卵を移植せずに凍結保存し、コロナ感染症が終息したのちに移植することを勧めるという声明を出しています。

 

そして、この声明を受けて、当分の間生殖治療を中止する施設が数多く出ています。

 

一方、日本産婦人科学会は妊婦さんに対してコロナウィルス感染症にかからないための注意事項をホームページに何度も掲載していますが、コロナウィルス感染症蔓延中の妊娠の回避や避妊の勧めについては言及していません。

 

このような現況の中で、いくつかの疑問点が生じてきます。

 

胚移植するかしないかの判断は、この時期に妊娠を目指すメリットとデメリットの客観的な説明(患者さんの心理を医師の考えに誘導する情緒的な説明は不可)を受けた患者さん御夫婦が自分達の判断で決めるべきもので、生殖医療施設(医師)が一方的に胚移植を休止すると決める権利があるのか?

 

時間的に余裕のない(年齢が高い)方が多い生殖医療を受けている患者さんの妊娠のチャンスをコロナ終息まで控えるより、生殖医療を受けていない時間的に余裕のある(年齢の若い)方の妊娠の回避、避妊の奨励を進める方が優先順位として高いのではないか?

 

コロナウィルス感染症の終息までの期間が不明であり(数か月から数年)その期間妊娠を控えることが産科的リスク(妊娠に起因する高血圧症、糖尿病や難産、早産、分娩時多量出血など)の増大につながり、コロナウィルス感染症蔓延中の妊娠と比較してどちらが悪影響が大きいのか?

 

受精卵の凍結を勧める一方で、その凍結費用や保管料等は誰が払うのか?

 

私は、子供を持つことが人生を豊かなものにする唯一の方法だとは考えていませんが、子供を持つことはその人の人生を変えうるほど大きな力を持つ数少ない出来事のひとつだと信じています。そして、挙児を希望される一組でも多くのご夫婦の夢が叶なうように昼夜を問わず働いてきました。

 

コロナウィルス感染症感染爆発による医療の崩壊を防ぐことはもちろん重要ですが、それが生殖医療の崩壊にもつながることないように、ウィルス感染の防御には最大限の注意を払いながら、患者さんひとりひとりの治療背景を適切に判断し、治療の継続、中断を御助言していければと考えています。

 

院内の患者さん密度下げるための診察時間の変更や院内でのマスクの着用、手指消毒等、皆様のご協力が必要です。何卒、よろしくお願い致します。

 

2020年4月12日   院長 山下直樹