多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)とは、
「両側の卵巣が腫大・肥厚・多嚢胞化し、月経異常や不妊に多毛・男性化・肥満などを伴う症候群」です。
卵胞(卵子の入った袋)が卵巣に多数生じ排卵しにくくなるため、月経周期が長くなる・不規則になりやすく
なります。
脳の下垂体から分泌されるLHの分泌量が増え、またインスリン抵抗性による高インスリン血症により、
卵巣で多くの男性ホルモンが分泌されます。男性ホルモンは卵胞の発育を抑制し、
卵巣の外側の膜(白膜)を厚くするため排卵が起こりにくくなります。女性の約5~10%にみられ、
PCOSの診断基準として
①月経異常(月経不順や無月経)、
②多嚢胞性卵巣(超音波検査で卵巣に卵胞がたくさん連なってみえること)、
③血中男性ホルモン高値またはLHが高値で、FSHが正常
の3つの項目を満たせばPCOSと診断されます。
レトロゾールやクロミフェンといった排卵誘発剤の内服で約半数が排卵します。効果が見られない場合は、ゴナドトロピン療法(注射薬)を併用します。
PCOSの方は卵巣にたくさんの卵胞があるため、注射薬の過剰な使用により多数の卵胞が同時に大きくなってしまうと卵巣が大きく腫れ、
腹部やひどい場合は胸部に水がたまる場合があり、入院が必要となることがあります。
この状態を卵巣過剰刺激症候群(OHSS: ovarian hyper stimulation syndrome)といいます。
稀に血栓症や腎不全など生命の危険に及ぶ場合もあり、また複数の卵子が排卵して多胎妊娠のリスクも上がるため、
注射薬の使用量には細心の注意が必要です。
腹腔鏡下に卵巣表面に多数の穴をあけることで排卵しやすくするという手術です。手術の侵襲はありますが、
その効果はゴナドトロピン療法に匹敵し、OHSSや多胎のリスクが少ないというメリットがあります。
この手術を行うと自然に排卵するようになったり、排卵誘発剤に対する反応性がよくなったりしますが、
効果は半年~1年ほどで、またもとの状態に戻ってしまいます。
血液検査でインスリン抵抗性がある方には、経口糖尿病薬のメトフォルミンが排卵障害を改善することがわかってきています。
メトフォルミンは血糖を下げてインスリンの過剰な分泌を抑えるので、卵巣で男性ホルモンも抑えられ、
卵巣内のホルモン環境が改善され、排卵しやすくなると考えられています。