学会発表報告
- 2021年8月20日
- 培養室
関東ではようやく晴日が見られるようになってきましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
報告が遅くなってしまいましたが、7月に開催された日本受精着床学会で「短時間媒精における媒精時間と使用培養液の影響について」の内容で当院のデータ発表をしてきました。会場は神戸国際会議場でしたが、現地に赴かずZoom発表が可能でしたので、今回はZoomで参加させていただきました。
当院では、ふりかけ法(C-IVF)で受精しなかった卵子を顕微授精(ICSI)により救済する「Rescue-ICSI」について、かなりの時間をかけて検討を重ねてきました。Rescue-ICSI成功のポイントは、施行までの「時間」です。C-IVF後にできるだけ早く不受精卵子を見極めることが重要ですが、精子侵入の有無を正確に判断するには時間を要します。しかしながら、判断に時間をかけすぎると、時間経過とともに卵子の質が低下してしまいます。ICSIに最適な時間は、(成熟卵子で得られた場合)採卵から4~5時間と言われています。これは当然Rescue-ICSIにも当てはまり、採卵から時間が経ちすぎてしまうと、Rescue-ICSIの効果が低くなってしまいます。無駄な時間をかけずに素早くRescue-ICSIをしたい一方で、C-IVFの時間を短縮してしまうと、C-IVFの受精率そのものが落ちてしまうという側面もあります。
そこで、受精率を下げずにC-IVFを短時間で完了できる培養液について検討しました。添付資料にある培養液Bは、活性酸素除去効果がある抗酸化剤を豊富に含んでおり、受精現象に対する工夫が凝らされた製品です。培養液Bを使用することで、C-IVFの時間を6時間→3時間に短縮しても受精率が低下せず、さらに胚の成長にも影響しないことが分かりました。
以上のことから、C-IVFの5時間後、つまり最初からICSIを選択した場合と同程度の時間でRescue-ICSIを施行する技術が確立しました。
この内容について、Zoomを通じて発表させていただきました。
会場からいくつか質問が来ましたが、残念ながら本検討のコンセプトが十分に伝わったとは言えないものでした。Zoom発表だと発表者の顔が見えず、スライドが淡々と流れているようにも見えますので、LIVE発表のように強調したいところがうまく伝わらなかったのかもしれません。説明資料や言い方などをZoom発表用に工夫しなければならないと思いました。
7月初旬に開催された卵子学会では、プレゼンテーションスライドにナレーションを録音し、動画を再生する発表形式でした。Zoomよりも内容の伝え方が難しい条件でしたが、当院高度医療研究所の甲斐が学術奨励賞を受賞しておりました。動画の構成、データの示し方等、さすがだなぁと思いました。
次回は11月に米子で生殖医学会が開催されます。オンサイト開催なのかはわからないですが、Web開催となった場合は発表資料をより工夫し、臨みたいと思います。
培養室 河野