「シマウマシスターズ」
- 2013年5月5日
- 研究室
「シマウマシスターズ」
皆様、GWも中盤となり、暖かな日が続いていますが、お元気ですか?
研究員兼培養師の中田久美子です。
4月は、新たな技術の導入とその技術を用いた研究に邁進した月でした。
またもや細かくは言えないのですが、一部をご紹介させていただくと、顕微授精の際にピエゾマイクロマニピュレーターという装置を使用する方法になります。
ピエゾというと、ご主人が電子工学系のご出身ならわかる方もいらっしゃるかもしれませんが、圧電素子と呼ばれているものです。
圧電体に加えられた力を電圧に変換する、あるいは電圧を力に変換する、圧電効果を利用した受動素子をピエゾ素子と呼んでいます。
なんのことやらさっぱりと思われるかと思うので、ピエゾの原理はキュリー夫人のご主人、ピエールさんが開発者であることからその名前がついたとも言われていることは覚えていただけたらと思います。奥様が有名ですが、ご主人の発明のおかげで私たちは日常生活のいろいろな場面で助かっているんですよ。興味のある方は調べてみてくださいね。
雑談はここまでにして。
そのピエゾの原理を利用したピエゾマイクロマニピュレーターという装置を用いて、微細な振動により、卵子の細胞膜を一瞬に貫き、精子を注入するという方法になります。
なぜこの方法がいいのかというと、通常の顕微授精では鋭角の針で卵子の細胞膜を刺し、少し吸引して、膜を貫くという方法ですが、この際に細胞膜の弱い卵子は電子顕微鏡の写真からダメージが多いという報告があります。
しかしながら、このピエゾマイクロマニピュレーターは、先端が丸い針(スクエアーカット)で微細な振動により一瞬で細胞膜を貫くため、膜へのダメージが一点のみであること、膜の修復が早いことがあげられます。
ただ、難点は、技術の習得がかなり難しいということです。
その技術の習得には、ヒトの貴重な卵子ではなかなか練習を積めないため、マウスで練習を積むのですが、マウスの卵子は物理的刺激に非常にもろく、哺乳類最弱という難点があります。ちなみに、ヒトの卵子は物理的刺激でいえば、哺乳類最強になるかと思います。
話を戻しますが、マウスの卵子で顕微授精を行って、赤ちゃんを産ませるまで出来る技術を持った人が実際にヒトの不妊治療において、ピエゾによる顕微授精をしているかというと、ごく限られた人しかいないというのが現状です。
ちょっと自慢ですが、私はピエゾICSIでマウスの赤ちゃんを何十匹も産ませてきました。
技術は一人ができても仕方のないことなので、山下湘南夢クリニックの培養師の誰でもができる技術にすることが私の目標です。誰かに技術を教えるのは偉そうですし、自分自身まだまだな身分なので、教えながら教わっている感じです。
写真は、ピエゾマイクロマニピュレーターに格闘中のシマウマシスターズを撮影しました。
二人とも、ピエゾでの受精率のさらなる向上を目標にかなり真剣に頑張っています。
撮影場所は、共同研究先の麻布大学です。学生さんたちも、みんないつもとても丁寧な対応をしてくれるし、何より元気があって、素直です。
こんな条件を提供していただける柏崎先生、伊藤先生には感謝しています。
いつものことですが、写真に中田は映っていませんよ。だって、カメラマンですもの。