早くも2月になりましたが、皆様お元気でしょうか？
高度生殖医療研究所の中田です。
節分に食べる豆の数を数えることも少し嫌になってきましたが、自分の年の１の位の数はしっかり食べました。

今回は2月に集中して実験している共同研究について少しお話したいと思います。
実験内容については細かくは言えないのですが、現在日本で実施されている、ある治療技術の検証を行っています。不妊治療の技術、医療の技術は、患者さんの皆さんもよくご存じだと思いますが、100%というものは存在しません。しかしながら、医師や医療従事者の技術や努力、患者さんの状態によって100％に近くなります。
１％低下させることはある意味、簡単ですが、１％を上昇させることは並大抵の努力ではできないものです。100人患者さんがいらっしゃって、１％は一人がうまくいくか、いかないか、にもつながります。
例えば自分がガンになった場合には、その治療の成功率の1%は特に大事な％になります。今まで自分とは関係ないと思っていたことが、現実に突き付けられ、自分は大丈夫とは思えなくなってしまいます。そのとき、本人はもちろんとても苦しみますが、家族や自分の周りにいる人もとても悩みます。

私は昨年の11月に祖母を肝臓がんで亡くしましたが、祖母は子宮体ガンで子宮を全摘出した際に輸血をし、C型肝炎に感染しました。私が生まれたのはその年でした。その後、肝臓機能の低下、肝硬変、黄色ブドウ球菌の心臓弁への感染、脳腫瘍、手術も何度も何度も受けてきました。自分にできることはとても少なかったけれど、毎回、祖母の血液データを見て勉強しましたし、肝臓の最新治療の勉強のためにガン学会にも行ったこともありました。最新の臨床研究に入らせてもらえないかと、ある医学部の先生にもお願いしたこともありましたし、肝臓移植の適用にならないかとも調べました。残念ながら年齢制限などで受けることができなかったのですが。年齢に関係なく、治療を受けられるようになったらいいなと思います。祖母のおかげで自分の専門分野以外に私はたくさんのことを勉強することができたので、いつか自分の仕事に活かせたらなと思います。

話がそれましたので、元の話に戻りますね。新聞やメディアでは、こういう技術でどこそこの病院で赤ちゃんが生まれました、と報道されることが度々あります。最近もありましたけれど。
けれども、ふたを開けてみると、10％の患者さんしか成功していない、もしくはそれよりもずっと下回る％だったりします。奇跡に近い％だったりします。それでも嘘ではないですし、０％ではないです。もちろん、現場の医師や医療従事者たちはとても頑張ってその％を上げているのだとは思いますし、YSYCでも1%のために、患者さん一人ひとりのために、みんな頑張っています。
けれども、みんながみんなうまくいくわけではないこと、実際にトライした方の話がないことは報道されていないことは事実です。

私が、共同研究で信頼する友人たちと行っている実験もその％がなぜ低いのか、どこが通常の受精と違うのか、を調べています。
その情報をみなさんにお伝えして、本当に自分がその治療を受けてもいいのか、受けてよかったと思えるか、うまくいった自分、うまくいかなかった自分を考えるきっかけになってもらいたいなと思います。どんな治療でも希望するかしないかは患者さん次第です。医療側はこの治療が絶対いい、とか、絶対受けなさいとは言えないのです。でも、それでも治療を受けたい、がんばりたい、という患者さんがいたら、私も微力ながら努力したいと思います。

最後に祖母がいつも言っていた言葉、
「良い時もあれば悪い時もある。だけど、良い時に天狗になってはいけないよ。悪い時に悲しみすぎてはいけないよ。悪い時は自分が悪かったとちゃんと反省しないといけないよ。ちゃんと謝らないといけないよ。やけくそになったらいけないよ。生きている限り、チャンスはあるよ。こどもは自分だけのものではないよ。みんなの宝だよ。だから、後悔のないようにがんばりなさい。」
毎朝、祖母の仏壇に手を合わせるとき、友人のくれたお線香をあげつつ思い出す言葉です。

相当なババコンですみません。でも、おばあちゃんはずっと私の中で生きていてくれると思うと、元気もりもりになります。このブログを読んで少しでも元気になってくれる方がいたらいいなと思います。

写真は一緒に実験している、スペシャルな友人であり、共同研究者の後ろ姿です。
1か月も遠方から来て、実験しています。
うちの看護師長からは「キムタクそっくり！」らしいですが、私にはそうは見えません。。。