ESHRE 2016|山下湘南夢クリニック|藤沢市の不妊治療/体外受精

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ESHRE 2016|山下湘南夢クリニック|藤沢市の不妊治療/体外受精

ESHRE 2016

蝉の声に夏の盛りを感じる頃になりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

この度フィンランドで開催されましたヨーロッパ生殖医学会に参加させていただきましたので、ご報告させていただきます。

現地に到着してから数日間雨続きで、少し肌寒い気候でした。フィンランドには川崎市、横浜市を合わせた人数とだいたい同じ規模、約500万人が暮らしています。親切な方が多く、デパートでレジを担当している女性に道を尋ねたところ、わざわざ店外に出てまで道を案内していただいた場面もありました。

本題に戻りますが、学会内容は胚の染色体異常検査に関するもの、タイムラプスを使用した胚の形態学的評価に関するものが、昨年に引き続き多く報告されていました。個人的に特に興味を持って聞いていた内容は、SCF( sperm chromatin fragmentation )による精子の質の評価です。ご主人さんの加齢とともに精子DNAの損傷は増加すること、細胞内に増加した活性酸素等酸化ストレスが原因として考えられるとのことでした。

数年前に、ご主人さんの年齢と臨床成績の相関について調べたことがありますが、受精率と年齢に相関は認められませんでした。しかし受精後の胚盤胞への発生率は、ご主人さんの年齢の増加に伴い低下する傾向が認められておりました。当時は満足のいく詳細な解析ができていなかったのですが、SCFの評価を行っていれば、同じような結果が得られていたかもしれないですね。細胞死に至らないレベルのDNA損傷は、受精能自体には大きな問題を起こさないのかもしれません。当院ではC-IVF (ふりかけ法) で受精した胚は成長性が良好であることから、精子所見、卵子所見に問題がないと判断された患者さまについては、C-IVFを積極的に勧めることが多いです。今回学会会場で示されたデータによると、射出精液中の精子のSCFが高値である方に限った場合、C-IVFよりもICSIを選択すること、またICSIに使用する精子についても、射出精子よりSCFが低値である精巣精子を使用することが、妊娠への近道であるのではないかとのことでした。酸化ストレスによるダメージは時間の経過とともに精子へ蓄積するようですので、ICSIへの精巣精子使用は有効である可能性があり、そのような主旨の報告も増えてきています。ただし精巣精子を顕微授精に使用するためには、外科手術により精巣から採取する必要がありますので、この点も踏まえて十分に検討する必要があります。

学会の中日に、会場の近くにある不妊治療施設の見学をする機会がありました。フィンランドでは年間あたりの治療周期は約5000とのことでした。そのうち約1000周期の治療を担っているDextra Fertility Clinicを訪問してきました。休診中の時間であったため設備が稼働している場面は見られなかったのですが、採卵を行う場所、採精室、培養室等施設内の動線を短くする工夫があちこちにあり、とても勉強になりました。非常に有意義な時間を過ごすことができました。

今回の学会参加でただ一つ残念であったことは、初めて参加したチャリティーランの成績です。とてもお示しできる成績ではありませんでしたので、今度参加する機会があれば、もっと良い成績が出せるように十分走りこんでから参加します(私の成績についてどうしても知りたい方は、受付の中西さんのブログを見てください)。

培養部 河野 博臣