「実験にのめりこむ9月」
- 2018年10月8日
- 研究室
今年は自然災害も多く、台風が来るとなると予定を変更するか、電車の遅延や停電を心配するこの頃ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?
高度生殖医療研究所の室長の中田です。
研究室の拡張工事も終わり、研究室も次のステージに来たのだなと思います。
9月の生殖医学会が中止に終わり、戻って来てからというもの拡張工事と実験に明け暮れる毎日です。実験については来年の学会で出して行きたいと思っていますので、楽しみにしていただければと思います。
話は少し変わりますが、私は高度生殖医療研究所に勤務する傍ら、山梨大学の若山先生の研究室にも所属していますが、つい先日ちょうど実験に行っていた時に、ノーベル医学生理学賞の発表がありました。本庶先生のお名前がネットニュースに流れた時に、「本庶先生が受賞された!」と研究室が活気づきました。若山先生がよくご存知の先生だったようです。また、実験中にふとショーケース内に飾られているものに目が止まりましたが、2012年にノーベル医学生理賞を受賞された山中先生の色紙と研究室に来られた際の写真でした。若山先生も世界で初めてクローンマウスを作出されたとても素敵な先生ですが、この生殖分野での人脈もさることながら、世界のトップの方々が近いところにいるのがすごいなと思いました。若山先生ご本人は私の学生時代からも変わらず、とても謙虚で、台風が過ぎた後に研究所前の落ち葉を黙々と一人、箒で掃除されていたりされるのですが。
世界で最大規模のピエゾのマイクロマニピュレーターが並ぶ研究室で私がマウスのピエゾICSIをしていると学生さんたちが後ろで見ていたりもしていたのですが(学生さんたちはクリニックの人がどれだけできるのか、大してできないだろうと思っていたようですが)、私がやっていると、おお~という声が聞こえました。もうピエゾ歴18年になるので、「ふふふ、そこらの人とは年季が違うのだよ」と心の中では思いましたが、顕微授精で何より悪いのは傲慢になることと、できると思わない方がいいこと、初めて触る倒立顕微鏡ではいつもよりもうまくはいかない、と思うので、気を引き締めて行いました。私がピエゾICSIを進めていると、後ろでは学生さんが韓国の留学生に顕微授精を教えていました。なかなか精子をうまく扱えていない留学生の子と、それを説明できない学生さんとがいたので、あまりしゃしゃりでないようにしよう、と思いましたが、私も一緒に説明したりしました。英語で説明しつつ、絵を描きつつ、実際に私のやっているところを見せつつ、していると韓国人の学生さんが満面の笑顔で「Thank you!」と言って、私の書いたメモを大事にノートにしまっているところを見て、なんだかとても温かい気持ちになりました。お互いに母国語が英語でなかったとしても、目的が同じだったり、うまくなりたい、教えたいという気持ちがあると通じるものなのだなと思います。私は、海外留学は今までできていませんが、こんな風に海外の学生さんたちと会えて話す機会があることはとてもありがたいことなのだなと思います。
この実験以外にも冒頭で話した実験が面白くて、患者さんの役に立つかも、培養士の友人たちにも良い情報になるかもしれないと思うと、自分が抑えられなくなって、土日の夜も夜中に実験に来たり、休みをとるのももどかしくて、実験を進めるこの頃です。
その中で自分を落ち着かせるためにも初めて参加した「茶道」。藤原定家の言葉に「言葉は古きを用い、心は新しきを用いる」という話を聞きました。伝統を大事にしつつ、新しいものを見つけていくこと。本庶先生の受賞にあたって、山中先生が若い世代へのメッセージでおっしゃったことと同じだなと思いました。「もっと!」と思うことは日々のことですが、長く培われた伝統を学びながら新しく有用なことや物事の真髄を探求していきたいなと思います。
写真は、茶道の際にいただいた和菓子です。こんなに繊細なお菓子を作ることができる日本人というのはいいなと思いました。