第24回日本臨床エンブリオロジスト学会参加報告
- 2019年2月25日
- 培養室
寒暖差のある日々が続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。培養室の河野です。
21日夜、北海道で大きな地震が再び発生しました。昨年生殖医学会を中止にした大地震の余震だそうです。半年もの期間が開いているのに、自然の力は本当に恐ろしいですね。関東でも近い将来大地震が発生する可能性が高いと聞きます。水と懐中電灯を手の届くところに用意しておく等、日頃から備えておく必要がありますね。
先月広島で開催された日本臨床エンブリオロジスト学会に参加してきました。今回は学会賞候補演題として、Gas-nil関連の内容を口頭発表してきました。今回は残念ながら受賞には至りませんでしたが、多くの投稿がある中で候補演題として採択していただいた運営の皆様に感謝しております。他施設の内容については、大きな動向の変化は感じられず、胚の分割状況から移植胚の予後を予測するという、移植候補胚が沢山得られる方のためのデータが多く認められました。移植胚を選定する上で、分割過程で変わった動きがあっても、胚盤胞へ発生すれば移植候補として問題ないと報告されていました。形態学的な視点から確実なことを言うのは難しいようです。
学会開催中、ある不妊治療クリニックの病院長がお亡くなりになる事件が起きました。私は会場にいた当該クリニックの培養室長から直接話を聞きました。その方は私の出身大学の大先輩にあたり、これまでも多岐にわたりご指導していただいた経緯があります。ご自身が大変な状況である中、体内環境をモデルとした培養システム構築について堂々と発表されていました。培養環境においては、アミノ酸の分解によるアンモニアの発生が現在も課題として残されています。このため、体内で存在しているいくつかのアミノ酸は、人工的に糖鎖を付加され、培養液中で分解されにくい状態で培養液に添加されています。これら人為的操作を受けたアミノ酸はしっかりと胚の代謝に用いられているのか、私個人としては非常に疑わしく思っています。この課題について、胚を培養容器の中に留めつつ、胚の周囲にある培養液のみを循環させるという技術を開発し、残存アンモニアの除去が可能になったと発表されていました。
そのようなすばらしい研究を続け、20年以上も不妊患者のために最前線で戦ってきた歴史のあるクリニックでしたが、今後の営業は難しいようです。犯人はその病院長の息子であると報道されていました。多くの患者様を残してお亡くなりになった無念さを思うと、胸が痛くなります。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。