「初めての英語での質問-オーストリアのESHREにて―」
- 2019年7月22日
- 研究室
皆様はいかがお過ごしでしょうか?高度生殖医療研究所室長の中田です。
5月から6月は、日本卵子学会で発表、アンドロロジー学会では優秀演題候補に選ばれて発表、そしてオーストリアで開催されたESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)に行くという、今までにないくらいの過密スケジュールでした。
そんな中でも私には、昔から心に決めている学会での信条があります。
それは、「学会に参加したのであれば必ず質問をする!」です。学会に参加するのは、自分の研究やクリニックの成果を発表するため、最新の情報を得るためでもありますが、学会参加費は、クリニックの費用、つまり患者さんの治療費が元になっています。ですので、質問をせず、クリニックの名前、自分の名前も言えないまま、学会期間を過ごすのはとても居心地が悪い、なんのために参加したかわからないと思ってきたからです。
もう10年以上前の学会では質疑応答が激しく、質問をするマイクの取り合いは頻繁に起こり、座長から続きは場外で行ってください、ということもよくある風景でしたが、最近の日本の学会ではこのような激しさはなくなってきたように思います。その中でも、私は質問することは続けているのですが…。
しかしながら、海外の学会では英語の壁は厚く、気になることがあっても、英語で質問することができずにいました。しかし今回、オーストリアの学会では3回、学会会場のマイクで、英語で質問することができました。質問するということでこんなにどきどきしたのは初めてでした。
ヨーロッパ生殖医学会は日本人の演題の採択率は低く、ほとんど日本人のいない世界中から来た人々の中で、質問をするのはとても勇気が必要でした。しかし、勇気の元には、発表の内容についてわからないことをそのままにしておきたくなかったことと、江戸末期から明治時代に日本から少年使節団(私よりもずっとずっと若い少年たちですが)がヨーロッパに送られ、英語もわからない中でたくさんのことを学んで日本に帰ってきたという本を読んだのを思い出したからでした。彼らは本当に勇気と希望に満ち溢れ、日本のこれからのことを考えていたと思います。今は、生殖医療だけでなく、他の技術も江戸末期とは違って、日本の技術の方が進んでいるし、海外にひけをとらないとも思うのですが。
あまりうまくはない英語であっても、内容を理解しようとして、疑問を持ち、質問をする、というのは基本ではないか、と思います。
私の質問に返答してくれたかたの答えを全て聞き取れず、全て理解できないという自分がはずかしくもありましたが、自分の少しばかりの前進を感じました。私の少しばかりの夢が叶ったオーストリアの学会になりました。しかし、英語をもっとうまくなるために努力を欠かさずにいたいなと思います。語学力がつきやすいのは若いころだと言われても、倍の努力をして、どう取り組むかで違うと思います。
培養成績、妊娠率、研究の実績から見ても当院は世界でも戦えるクリニックだと思います。患者さんの皆様も、自分はどうだからと思わずに、まずは一歩でも、少しでも前進してもらいたいなと思います。それは、とても勇気の必要なことだと思いますが、何もしないよりも少しの努力でも、変わることもあると思います。私も英語だけでなく、実験もがんばりたいと思います。
写真は、学会会場の企業ブースで見たサンドアートです。学会会場でアーティストの方がその場で作品を作るのを見たのは初めてでした。さすが、芸術の国とも思いました。サンドアーティストの方が、滑らかな手さばきで砂から家族の絵を作り出す様子にしばらく見とれてしまいました。