「言葉の力」|山下湘南夢クリニック|藤沢市の不妊治療/体外受精

〒251-0025 神奈川県藤沢市鵠沼石上1-2-10 KENEDIX藤沢4F
0466-55-5011
ヘッダー画像

職員ブログ

「言葉の力」|山下湘南夢クリニック|藤沢市の不妊治療/体外受精

「言葉の力」

桜も満開から葉桜になりかけているこの頃ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

高度生殖医療研究所の中田です。

私が今までにスピーチを聴いて、言葉に魂がこもっていると感じたのは、スティーブ・ジョブズの卒業式のスピーチ、オバマ大統領が広島に訪問された際のスピーチでした。英語で話しているのだけれど、言語が違っていても何て命の吹き込まれた言葉なのだろうと思い、何度も繰り返し聞いては、涙もろい私は何度も泣きました。

最近、東京大学の上野千鶴子総長の入学式の祝辞を聴いても、胸が熱くなりました。

全文はこちらになりますが、私は、以下の部分にとても感動しました。

https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/b_message31_03.html

「あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。でずが、冒頭で不正入試に触れたとおり、がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています。そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください。あなたたちが今日「がんばったら報われる」と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひとたちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうぜわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。

あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。女性学を生んだのはフェミニズムという女性運動ですが、フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です。」

不妊治療は1990年代後半から日本だけでなく世界でも急速に広まった治療の一つです。科学の進歩とは言いますが、2000年頃では難しかったことが今では当たり前の技術になろうとしています。その背景には、たくさんの悩まれた患者さんたちがいて、それを何とかしようとしてきた医師や看護師、培養士たちの努力があります。どれだけ頑張っても報われない、うまくいかない、というのは、昔も今も気持ちは同じかもしれませんが、昔に難しかった患者さんたちが今ではうまくいく可能性が高くなっているということもあります。治療に行くこともできなかった、だれにも不妊治療のことを打ち明けられなかった世の中が当時患者さんだった方々が戦ってくれたこともあり、今少しずつ変わってきたのかもしれないとも思います。また、妊娠して出産すると退職して当たり前、職場でマタハラ、パワハラ、冷遇されて当たり前の世の中が、育児休暇をもらい、職場に復帰できること、時短という制度ができたことなども、孤独に戦い、勝ち抜いてきた人たちがいたからこそのことだと思います。治療にしても、女性の生き方としても、今では当たり前となっていることが当たり前ではなかった時代の話をしても、若い人たちからすると自分たちの時代ではないし、自分たちのせいではないからと言うかもしれないです。しかし、何にしても歴史を作ってくれたひとたちがいたからだと言うことを私も忘れてはいけないなと思いました。

また、最近、私はずっと手掛けていた論文が受理されました。何度も、査読をしてくださった先生方からご指摘をいただき、修正を繰り返しました。査読をしてくださっている先生方は、自分の仕事以外に無償で論文の内容について指摘し、この書き方の方がいいというアドバイスをくださっていました。私は論文を書きながら、自分に欠けているものが何かということとを恥ずかしく思いつつもそれを認め、教えてくださっている先生たちへの感謝の思いが増しました。おそらく、その先生方も論文を出す際には、別の先生方からのご指摘をいただきながら、論文という知の財産を共同で作っているのだろう、とも思いました。自分だけ良ければいいと言うのではなく、自分の経験だけでなく、過去の報告と照らし合わせ、しっかりした科学の根拠を示し戦っていきなさい、というエールだと思うことができました。

私は上野千鶴子さんという女性がどのような方でどのような経歴の方か、よく知りません。けれども、私は女性の生き方だけでなく、不妊治療という治療について、論文を書くということについても共通することがあるなと思う言葉になりました。

4月は外部で講師を務め、5月は学会と過密なスケジュールです。でも、新しい研究の報告をすることで、少しずつでも患者さんの選択肢を広げ、可能性を上げることができればと思います。春は気温の変動も激しいので、皆様もおからだを大切にしてください。

写真はこの歳にして初めてみたディズニーランドの夜のショーの写真です。プロジェクションマッピングも素晴らしく、心に残る夜になりました。