「得意不得意」ー2016年もありがとうございました!ー|山下湘南夢クリニック|藤沢市の不妊治療/体外受精

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「得意不得意」ー2016年もありがとうございました!ー|山下湘南夢クリニック|藤沢市の不妊治療/体外受精

「得意不得意」ー2016年もありがとうございました!ー

今年も残りわずかとなって参りましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

高度生殖医療研究所の中田です。

突然ですが、技術的な話から始めさせていただきます。昨年から精子の解析の研究を始めていますが、解析の際には、精子をスライドガラスの上に張り付けて、何度か決まった温度条件と決まった時間に染色するための液体に漬け、染色液を垂らし、その上にカバーガラスをかけ、カバーガラスの端をマニキュアで封入する、という作業があります。

これらのいくつかの工程でひとつでも間違えてしまうと、精子を綺麗に染色することができず、解析もできないということになり、私にとってはとてもとても苦手な分野でした。大学の時には技術的には習ってはいても、自ら進んでやるよりも得意なヒトにやってもらった方がいいとずっと思っていました。

でも、苦手と言っていても、何一つ先に進むことはできません。その中で、染色するということを思った時に、染物師になった気分になればいい、と思うことにしました。

気分になるには染物師にはどんな人がいるのだろう?と調べた時に、出会ったのが、長谷川等伯でした。(私は目標というか、自分がこの人だったらどうするかな?と思うことを大事にしています、めんどくさい人間ですね)

長谷川等伯、皆さんはご存知でしょうか?狩野永徳はご存知の方もいらっしゃるかもしれません。狩野永徳は織田信長や豊臣秀吉から依頼されて、安土城や伏見城の絵を描いた絵師です。山本兼一さんの本で狩野永徳を読み、直木賞を受賞した安部龍太郎さんの本で長谷川等伯を読みました。狩野永徳は京都で活躍する狩野派の棟梁かつ天才的な絵師であり、長谷川等伯は能登出身で元は武士でありながら、次男に生まれたため、染物師の家に婿に入った染物師でした。等伯は永徳を尊敬しつつもライバル心を燃やし、能登を出て、京都に行き、千利休からの依頼を受けて絵師の才能を発揮し始めます。永徳は等伯の絵を見て、その才能を恐れるようになり、という、絵師の世界での競争がありました。安土桃山時代の絵が今でもたくさんの人の目に触れるのは、二人の天才による良いものを作ろうという熱い思いが繋がっているのかもしれません。

一方で、私の話に戻りますが、染物師と絵師による熱い戦いとはかけ離れたところにいて、論文のような綺麗な画像がなかなか撮影できません。その中で、共同研究の先生や顕微鏡の営業の方にいろいろと教えていただいて、綺麗な画像がなんとか撮影できるようになりました。

最近では苦手な解析の技術を使って、新しい別の研究を行うこともできるようになり、最近少しずつ結果が出てきています。

たぶん、誰にでも得意不得意があって、こんなことは自分には無理かもしれない、と思うこともあると思います。自分ができないことを人ができるとすごいなと思うけれど、それは逆に、相手も思っていることなのかもしれないです。でも、できない、無理、と思うのは、自分次第なのかもしれません。やってみたら、面白いこと、考え方が変わること、たくさんあるのかもしれないですね。

苦手な部分や自分の欠点をどう克服するか、負けたくないというライバルがいるか、というのは、良いものを作ろうとするときにとても大事だなと思いました。

来年もまた新しい実験結果を出せるように頑張っていきたいと思います。少し早いですが、皆様もどうぞ良い年をお迎えください、