「技術を伝えること」|山下湘南夢クリニック|藤沢市の不妊治療/体外受精

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「技術を伝えること」|山下湘南夢クリニック|藤沢市の不妊治療/体外受精

「技術を伝えること」

前回のブログから更新が早いですが、高度生殖医療研究所の中田です。
9月4日から6日に群馬パース大学で開催された「第一回エンブリオロジストのためのPGS/PGDを学ぶ会」でデモンストレーションをしてきました。
PGSとPGDについては、培養室主任の河野が先日のブログに書いている通りですが、日本ではまだまだこれから始まったばかりの技術です。
今回はこの会の主催者である、荒木康久先生から声をかけていただき、デモンストレーターをさせていただくこととなりました。
荒木先生と私の出会いは、10年以上前のテキサスで開催されたASRM(アメリカ生殖医学会)での学会発表の時です。まだ、可愛い大学院生だった私が初めて発表させていただきましたが、日本人の発表は今よりもかなり少なく、この学会に参加している日本人も少ない状況でした。国際学会での日本人の採択率は今では8%くらいと言われていますが、当時は5%以下という厳しい状況でした。そのような中で、偶然、バスを待っている時に発見したのが荒木先生でした。最初は日本人によく似た、中国人(国際学会では中国人の方も日本人と中国人の見分けがつかず、声をかけてくる人もいるくらいです)かなと思ったのですが、日本人の荒木先生でした(失礼ですみません)。
ご挨拶をすると、君はどんなことを勉強しているの?どんな発表するの?とニコニコと聞いてきてくれたことを今でも思い出します。僕は一人で来ていて、テキサスは初めてだし、一緒に少し観光しようか?と言っていただいて、当時加藤レディスクリニックに勤務していて、発表もあった方と一緒にアラモの砦を見に行ったりしました。とても楽しい旅になりました。
日本に帰国してから、荒木先生が日本でもこの業界をリードする方だということを知り、とんでもなく謙虚で、温かく、勉強熱心な方だと思いました。
YSYCで国際学会にチャレンジしましたが、採択されなかった時に、ある学会で偶然、荒木先生にお会いしました。「荒木先生、私の研究は国際学会で採択されませんでした。どうしてなんでしょうか、どこが足りないでしょうか?」と聞いた時も、「何度でもチャレンジするんだよ!1回で終わりじゃない。ダメだったら何度でも何度でもチャレンジする、これが大事なんだよ。きっと、君ならできるから。」と言っていただきました。こんな風に励ましてくださる方もいるんだ、頑張らなきゃいけないなと思いました。
その翌年、それが今年ですが、国際学会で発表することも叶い、荒木先生にご報告すると、とてもとても喜んでいただきました。

今回のデモンストレーションの話を全然していなかったので、話を本題に戻させていただきます。イギリスで一番大きい体外受精の施設であるCAREの培養室長のルイーズと世界で最初に着床前診断を行った施設Reprogeneticsの研究室長のペレとが来日し、デモンストレーションは高度生殖医療技術研究所の荒木泰行さん、IVF大阪の小林さん、ルイーズと私でデモンストレーションを行いました。日本全国から80人以上の培養士が集まり、私は大体30人くらいにマンツーマンで技術を教えさせていただきました。デモンストレーションと研修をする顕微鏡はNIKONでした。NIKONの技術の方がやりやすいように常に気を使っていただいて、とても助かりました。しかし、マニピュレーションするシステムは日本にはないRIというシステムでこのセッティングを見た瞬間は正直、どうしようかな、と思いました。でも、すぐに馴れたので、馴れればやりやすいシステムだなと思います。
来ていただいたみなさんが練習する倒立顕微鏡は1台しかありませんので、他の人はちょっと退屈してしまうのですが、一緒に来てくれたうちの培養室主任の河野がその間に懇切丁寧にいろいろな質問に答えていました。
技術を練習する胚はマウスの胚盤胞でしたが、せっかく来てくれたので、皆さんにできるだけたくさん練習してもらうことを私のグループの目標にし、とにかくたくさんやっていただきました。そのために、河野がいち早く、マウスの胚盤胞を確保してくれたり、私一人ではできなかったと思います。私は教える方に集中することができたのも河野のおかげです、とても頼もしくありがたかったです。
荒木先生にはその後、私をこのデモンストレーターとして呼んでいただいたお礼のメールをさせていただきましたが、「仲間だから。中田さんの夢が叶うようにこれからもがんばりなさい」とおっしゃっていただきました。

技術を伝えることは患者さんの夢を叶えることにつながります。そのためには、教える側は最大限の努力をしなければならないと思います。それをまた、荒木先生から私は教えていただいたし、河野からはチームとしての成功のために必要な時に必要なことを適切な時にする大切さを教えられたと思います。
教えにいったのに、教えられたことの方がたくさんあるのは不思議ですが、貴重な機会をいただいてよかったと思います。

YSYCでは現時点では、胚を取捨選択するPGS/PGD技術はクリニックの方針からすぐに臨床導入の予定はありません。しかし、この技術は不良胚の改善に応用できる可能性があるため、YSYCではいつでも使えるように準備しています。
皆様のお役に立てるようにこれからも頑張っていきたいと思います。

写真は恥ずかしいのですが、デモンストレーション中の写真です。