「日本を変えた千の技術博」を観に行って|山下湘南夢クリニック|藤沢市の不妊治療/体外受精

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「日本を変えた千の技術博」を観に行って|山下湘南夢クリニック|藤沢市の不妊治療/体外受精

「日本を変えた千の技術博」を観に行って

河桜の咲くころとなりましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?高度生殖医療研究所の中田です。

先週末の土曜日、風邪をひきながらも上野公園で開催されていた「日本を変えた千の技術博」を観に行ってきました。

その展示会では、科学技術に関する600点を超える貴重なものや文献が展示されていました。今からちょうど150年前(1868年)、江戸時代は終わりを告げ、明治時代が幕を上げてからの近代化とともに、日本の科学技術は飛躍的に発展してきました。江戸末期、明治、大正、昭和そして平成というたった150年の間に、海外から取り入れた技術を、医師、科学者、技術者たちは日本独自に発展させてきました。私は彼らの血と汗と涙の結晶であるたくさんの製品や発明品を見て、感動せずにはいられませんでした。

最初にまず感動したのは、1mの鉄の棒「メートル原器」とそれを入れる鉄のかたまりの収容器でした。それまで日本ではメートルは単位としては使われていなかったため、海外から取り寄せた1メートルが日本でも1メートルという単位として、精密に測ることができるようにならなければなりませんでした。そのため作られたのは日本で作った「最初のものさし」でした。最初のものさしが正しい1メートルかどうかを調べるために、「鉄のメートル原器」を鉄のかたまりの収容器に入れ、縮んだり曲がったりしないように海外に輸送し、確認することを行ったそうです。今ではどこででも手に入る「定規」、私が卵子や胚、精子のサイズを測ることができるようになった背景にはこのような苦労があったのだと初めて知りました。

その次に感動したのは、「繭」から「生糸」を作り出す、紡績機でした。たくさんの「繭」から「生糸」を紡ぎだす機械は、映画で見たことがありましたし、実際に戦時中に紡績工場で働いていた祖母から話を聞いていました。しかしながら、実物が動いている様子を見るのは初めてでした。電気ではなく、人が踏むペダルによってからくりのように動いていた機械が、電気によって絶え間なく動くようになり、「生糸」の生産量は格段に増加しました。また、それに伴って、「蚕」の品種改良も行われたそうです。病気に強い、繭が大きいなどの特長をもつ「蚕」でなければ生産量をあげることはできなかったそうです。たくさんの「繭」が展示されていました。日本の経済の発展の1つとして「繭」から作り出された「生糸」は貢献して来ましたが、紡績機の進歩と蚕の品種改良、そこには機械の技術者と蚕の生産者との協力があったのだろうと思いました。ひとつひとつの装置や機械が並べられていましたが、そのひとつひとつにはたくさんの人たちの思いが詰まっているように感じました。このような熱い展示会を見ることができてとてもうれしかったです。

私は、この山下湘南夢クリニックの高度生殖医療研究所で、いくつかの製品を開発してきましたが、その中の「MAYU」(極少数精子の凍結コンテナー)にしても、たくさんの方々のお力をいただいてきました。発案として私が考えた時には、実際にこのコンテナーを作ってくれる企業さんを探さなければなりませんでした。しかし、いろんな方々が協力してくれて、一緒に開発したいといくつかの企業さんが手をあげてくださいました。一緒に頑張ってくださる企業さんとコンテナーの原型からいろいろな試作品を作り、それをひとつひとつ確認してきました。実際の使い心地をうちのクリニックの培養室長と相談したり、そんなひとつひとつのことがあって、「MAYU」というコンテナーを作り出すことができました。考えても思いついても、それを形にすることはとても難しいですが、「MAYU」はラッキーが重なって作り出すことができました。卵子や胚、細胞で使われていたものを精子に代用するという風潮がある中、「MAYU」は精子専用ということで苦労もありましたが、有り難いことに今では少しずつですが他のクリニックの方にも愛されてきたのではないかと思います。

現在の日本、私たちのいる生殖医療の業界では、昔の日本のように「海外からの技術」は優れているものとしてすぐに取り入れる傾向がありますが、日本独自の新しい技術や製品は「海外からの技術や製品」よりも厳しい目が向けられているようにも感じます。「MAYU」だけでなく、10年20年、50年、私がいなくなっても残るような製品を作り、同業の皆さんに愛され、患者さんに貢献できるものをまだまだ作っていきたい、と改めて思わせてくれる展示会に行けてよかったと思います。

高度生殖医療研究所では、ブログでも紹介していますが、新たな研究員が新しい技術の開発に取り組んでくれています。とても確かな技術を持ち、妥協を許さない彼をとても信頼していますので、一緒に働けていることがとても嬉しいです。私自身も新しい製品の開発に取り組んでいます。今はまだ言えませんが、今年の秋の生殖医学会から発表していき、皆さんに愛されるようなものにしていきたいと思っています。今年の上半期は、アジア生殖医学会での口頭発表2題、日本卵子学会で口頭発表2題、日本アンドロロジー学会では学会賞候補演題に選んでいただき、日本受精着床学会では4題の要旨を投稿しています。体には少し気をつけつつ今までと同様に走り続ける年にできたらと思います。