「横浜ART研究会で教育講演をさせていただきました」
- 2018年8月26日
- 研究室
8月も終わりに近づきましたが、まだまだ残暑が厳しいこの頃です。皆様はいかがお過ごしでしょうか?
高度生殖医療研究所室長の中田久美子です。
患者様の皆様には、3階が工事中でご不便をおかけしまして申し訳ありません。研究室の拡張のため、あと2週間ほどで工事は終了致します。精液のお持ち込みや採精室は今までと同様に使用しておりますが、精子への影響はありません。どうぞご安心ください。
本題に移らせていただきますが、8月25日に横浜で開催された横浜ART研究会で教育講演をさせていただきました。私の講演は、「PGS(PGT-A)検査における取り扱いのPitfall」です。着床前診断において、胚盤胞から細胞を採取する際にはいくつものPitfall(落とし穴)が存在します。そのPitfallに陥らないためのポイントと、当研究所と企業さんたちとで開発した試薬や方法をいくつかご紹介させていただきました。医師もたくさん参加する学会ですが、「面白かった、勉強になった。」とおっしゃっていただきました。参加した培養士の方々からは、「わかりやすかった、勉強になった。スライドが欲しい。」とおっしゃっていただきました。このように、素敵なコメントをいくつかいただき、とても嬉しい機会になりました。
研究会には他にも何人もの先生方が講演にいらっしゃっていましたが、私がとても面白いと思ったのは、「着床のメカニズム」を講演いただいた東大の廣田先生の発表でした。面白かったのは、着床前の胚盤胞、透明帯を脱出した胚をトロホブラストと言うのですが、そのトロホブラストが子宮内膜を貪食する、というものでした。子宮内膜側は「eat me signal」(そのままの名前で可笑しいですね)を出すことによって、トロホブラストがそのシグナルを受け取り、貪食することにより子宮内膜への接着が開始するそうです。
移植する胚盤胞として、着床率が高いのは栄養膜細胞の数が多く、きめ細かく栄養膜細胞が存在する胚盤胞、という報告がESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)でもされています。
私は「トロホブラストの栄養膜細胞数によって、着床率が変わるのでしょうか?栄養膜細胞数を半分や1/3以下にしたらどうなるのでしょうか?」と廣田先生に質問させていただきましたが、「とても面白い発想ですね。しかし、まだ誰も研究していません。これから、胚の方も実験を進めて行きたいと思います。」とのお返事でした。
私の方も、少しずつではありますが、患者さんの着床率を上げられないか?という研究も始めています。また別の機会にご紹介できるように実験をコツコツ進めて行きたいと思います。
写真は講演中の私です。動画をたくさんご紹介しましたが、停止することもなく発表できました。自称「滝クリワンピース」も好評をいただき、チャイナドレスじゃないけど、それもいいね!とおっしゃっていただきました。いつかどこかの学会で「ベストドレッサー賞」をいただける日を夢見ています。(洋服代も大変なんですけれど。。。自分の気持ちが上がるのが大事ですね!)