いのちのはじまり 〜顕微鏡映像で綴る物語〜
- 2021年6月9日
- 研究室
こんにちは。高度生殖医療研究所の甲斐です。
最近は蒸し暑くて堪える日が続いています。今でさえこんなに暑いのに、8月になったらとても耐えられない、なんて思ってしまいますが、そんな心配をよそに私たちの身体は毎年上手く対応してくれます。ホント、我ながら良く出来ていると感心します。素晴らしきかな、人体。
そんな私たちの身体は約37兆個の細胞から出来ており、その種類は270種にも及ぶとされています。膨大な数と種類の細胞から成り立っている人体ですが、元をたどると1個の細胞、つまり受精卵から始まっています。たった1個の細胞から、このように複雑な構造を持つ身体が出来上がるなんて、本当に不思議でなりません。受精卵は最初の分裂で2細胞になり、その後、桑実胚を経て胚盤胞へ発生します。ここまでで、大体7-8回の分裂を経ています。桑実胚を迎える頃になると、それまで同じ性質を持っていた細胞たちが、徐々に異なった性質を持つようになります。そして胚盤胞になると、胎児になる細胞群と胎盤になる細胞群の2種類の細胞群に分かれます。しかしながら、どのようなメカニズムで2種類の細胞に枝分かれするのか、未だに解明されていません。そのような状況ですから、複雑な臓器や構造がどのように形作られて私たちの身体が出来上がっていくのか、そのメカニズムが完全に解明されるまでにはまだまだ随分と時間がかかりそうです。まさに神秘のベールに包まれている訳です。
私はその一端を少しでも垣間見ようと、受精卵の内部で起きている様々な生命現象を顕微鏡で観察しようと試みています。その中でも、初期胚の発生を生きたまま観察することが可能なライブセルイメージング解析は、当院の強力な武器の一つになっています。これまでに取得したデータをいくつか発表してきましたが、その度に感じるのが映像の持つ確かな説得力です。百聞は一見に如かずという言葉の通り、生命現象を映像で示すということは、どんな論拠を並べるよりも圧倒的な説得力を持っています。そのような解析を通じて、少しでも“いのちのはじまり”の神秘を解き明かすことが出来ればと思っています。
さて、前置きが長くなりましたが、生命科学・医科学映像を制作する企業が開催する上映会にゲストとして招かれることになりました。とても興味深い内容で、私自身、とても楽しみにしています。興味のある方は是非チェックしてみて下さい。参加をご希望の方は事前申し込みが必要なようですのでご注意下さい。