その声、聞こえていますか?
- 2017年5月19日
- 培養室
夏に向けてだんだんと気温が上がってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
培養室の河野です。
当院培養室では採卵された卵子の培養結果について、決められた日時に患者様ご自身でお電話をいただくという形でお伝えしています。先日患者様の一人から、前周期の培養結果について詳しいお話が聞きたいと申し出がありました。お電話にて結果をお伝えしているのですが、改めて、とのことでしたので患者様が来院をされた際に対応を致しました。
当院では培養記録の一つとして、受精や分割等、培養胚の成長段階の節目で写真を保存しています。お話をご希望された患者様にはそれらを資料としてお渡しし、内容について説明をしています。今回の患者様に対しても同様の対応を致しました。患者様は培養結果について十分に納得された様子でした。ふと気になって、改めて今回お話をご希望された経緯をお聞き致しました。
「電話にて聞いた結果について、実感がわかない。だから話を聞きに来た。」
お電話にてお伝えしているのは、受精したかどうか、分割したかどうかのように、〇×の「結果」になります。胚が凍結できたとしても、順調にすくすくと育ったのか、苦戦しながら頑張った結果なのか、状況を正確に伝える手段として、電話では解決が難しい側面があります。また、胚の観察による形態学的な評価にも限界がありますので、全ての状況について誤解を招かないように電話で説明するには、内容があまりにも繊細です。このため、胚の詳しい説明は、患者様が来院した際に直接お会いし、顔を向き合わせ、必要に応じて紙にスケッチするなどの手段も交え、正確にご理解いただけるようにお話しすることが大切です。全ての患者様に対応をすることが難しくはありますが、ある程度時間的な猶予を持っていただければ、説明のための準備を行うことができます。併せて近い将来、培養胚の様子を患者様の好きな時間にリアルタイムで観察できるよう、システムの改善についても検討していこうと考えております。
今回は不満をお持ちだった患者様が、私たちに「一歩」歩み寄り、ご自身の声を聴かせてくださったおかげで、一つの満足に繋がる結果となりました。
考えや想いとは、様子を見て察することは中々難しく、直接言葉にしてようやく伝わることもあります。信条や思考回路は個々により大きく違いますので、向き合ってお話をすることがより良い結果を生み出す上で非常に大切なものであると考えます。もちろんそれは個人同士であれ、患者様とクリニックであれ、社会において変わらないものであると思います。