たまごの「意思」
- 2012年6月28日
- 研究室
こんにちは。二回目の投稿となります、培養士兼研究員の中田です。
突然ですが、皆さんは「自助論」を読んだことはありますか?
著者のサミュエル・スマイルズ(1812-1904)は、イギリス人であり医師でありながら、
この本を書いた方でもあります。「天は自ら助けるものを助ける」という言葉を耳にした
ことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、この本に出てくる言葉です。
松下幸之助さんの言葉「人事を尽くして天命を待つ」とも似ている部分があるような気が
します。どちらの言葉も本人の努力が大切で、でも最後は天が決めることと、と私は解釈
しています。
スポーツや勉強、仕事、健康の維持は本人の努力次第でなんとかなることは多いのでは
ないかと思います。しかし、両親から受け継いだ遺伝的な体質や自分の意志とは関係なく
発症してしまった病については個人の努力だけではどうなるものでもないかもしれません。
「天」とは一体何者なのかはわかりませんが、それでも努力しようと「意志」をもつ人には
協力者が現れて何かしらの道が開けるように思います。医療に携わり、研究も行っている
私が非科学的なことをお伝えするのはおかしな話ですが、たまごを見ていると時々ミラクル
なことが起こります。元気をなくしたかのように見えたたまごが、その翌日には、
はちきれんばかりに育っていたりします。それは、きっとそのたまごやそのたまごの両親の
「意志」が起こしたものなのではないかと思います。たまごの「意志」に応えられるように、
培養士として研究員としてできることを頑張っていけたらと思っています。
ここで、恥ずかしながら私の話をさせていただきたいと思います。私は高校生の時に今から
約17年前(もうそんなに経つんですね)ですが、深夜番組で減胎手術を見ました。
減胎手術とは、排卵誘発剤により多数の卵子が排卵され受精・着床した場合や多数の胚を移植
することで、多胎妊娠となるため、妊娠3か月になる前に子宮口に近い胎児と一番大きい胎児
を残して、ほかの胎児を中絶することを言います。山下院長は見学したことがあるそうですが、
思わず念仏を唱えたとおっしゃっていました。患者さんはとてもつらかっただろうなと思い
ますが、たくさんの手術を見てこられた医師が念仏を唱えるくらいの風景とは、私は映像で見た
だけですので想像を絶します。
この減胎手術は、患者の精神的肉体的負担、医師の命の選択権、倫理的な問題から、社会的な
コンセンサスは得られていません。
(ちなみに当院では、主に単一胚移植、多くても2胚移植ですので、このようなことは一切
行われていません。)この衝撃映像が培養士として働きたいと思ったきっかけであり、研究を
したいと思った原動力です。
また長くなってしまい、研究のことを書けませんでした。
説明会にいらっしゃってくださった方にはお話することができたのですが、現在、慈恵医大の
岩本先生、産業技術総合研究所の高橋先生、酪農学園大学の堂地先生、麻布大学の柏崎先生と
培養環境の改善と胚の新しい評価方法についての共同研究を行っています。
こちらの写真ですが、同実験者の酪農学園堂地修先生が体外受精で生まれたウシに名づける際の
命名候補表の一部です。堂地先生は、夢の入った名前を学生さんたちと考えているそうです。
ウシだけではなく学生さん思いのとても素敵な先生なんですよ。
偶然ですね、山下湘南夢クリニックと同じく夢を大事にされています。