みかたのあかちゃん てきのあかちゃん
- 2022年6月4日
- 事務室・受付
こんにちは。
受付の中西です。
このブログのタイトルは、
「へいわとせんそう」という絵本の最後のページに出てくる文章です。
「へいわとせんそう」は、
へいわのボク せんそうのボク
へいわのチチ せんそうのチチ
へいわのハハ せんそうのハハ
へいわのくも せんそうのくも
というように、見開きの左側に「へいわ」、右側に「せんそう」が淡々とした調子で描かれている絵本です。
現在の平和な日本で暮らす私達が見たら、左が日常、右が過去の歴史と捉えます。
しかし、戦争中の国に暮らす人が見たら、左が未来への願い、右が現在と捉えられるでしょう。
この絵本は、どちらが良い、悪いとも語りかけることはなく、見る人の状況や思想によって意味が変化する絵本のように思います。
でも、最後のページの
みかたのあかちゃん てきのあかちゃん
は、全ての人を一瞬で黙らせる力があります。
パッと見ただけで、胸をギュッと掴まれ痛くなります。
どちらも、可愛らしい顔でスヤスヤと眠るあかちゃんです。
文章を隠して絵だけを見ると、どちらがみかたでどちらがてきなのか分からないくらい、
両者に違いがないのが分かります。
元は同じ人間同士なのに、おかれた環境が違うだけで敵味方を区別し、
争うなんて馬鹿げていることなのだと、とてつもない説得力を感じるのです。
ニュースでは毎日のようにウクライナの現状が報道されています。
世界的に影響力のある国が、国際法律を破る行動をとるとは誰も予想しなかったことで、
これが本当に現実に起きていることなのかと、全世界が驚き、注目しています。
また私自身がショックを受けたことに、
ウクライナが助けを発信しても、それまで長い間、世界の秩序を守る役割を担ってきた強い国々が援軍を派兵しなかったことがあります。
軍事介入は過去の話で、強い国が他の国の問題に首を突っ込む余裕は無くなり、
自分の国の問題は自分達で解決しなければならない状況のようです。
窮地に立たされているウクライナの姿に、明日の日本を重ね合わせずにはいられません。
核を持たない国が核保有国に攻められる構図は、正に日本にも起こりうる状況で、
今後も日本が絶対に安全であるとは言えなくなってしまいました。
日本は現在、各所に強い外国の基地があり、条約により安全が確保されているようにみえます。
しかし、強い外国の世論が過去に比べ戦争に消極的な風潮があり、中東の紛争地帯から軍を撤退しています。
日本は、かつての豊かさを失いつつあり、深刻な人口減少によりいずれは消滅すると言われています。
弱体化した日本を守っても利益がないと判断された場合、中東と同じように、日本から軍を撤退してしまうかもしれません。
守ってくれるものが無くなった日本に核保有国が攻めてきたら、どうなるでしょう。
ニュース映像の向こう側のウクライナの現状が、他人事ではなく、この日本でおこる日がくるかもしれません。
私達は平和な時代に産まれたので、平和はごく当たり前のものとして生きてきました。
苦しい時代は知らぬ過去の話なのだと、これからは平和で安全な世の中しかないのだと、思い込んで生きてきました。
先人が未来の私達のために必死でつくってくれた「へいわ」とは一時的なフィクションであり、恒常的なものではありません。
未来の子供達に届けるためには、今を生きる私たちが守り続ける努力をしなければいけないのです。
いつか、私たちが暮らす藤沢の街が、湘南が、日本が爆撃され失われる日がくるかもしれないと思うと、恐ろしくてたまりません。
戦争は過去のものではなく、平和は保証されたものではないのです。
日常とは、戦争を否定し平和を願い声を上げ続けて、やっと手に入れられるものなのかもしれません。
そして、平和を願う心とは、人を大切に想う心から始まるのだと思います。
人と人の縁は複雑に絡み合い、網目のように張り巡らされています。
ふとしたきっかけで生まれた自分の心に宿る負の感情が誰かに向かってしまったとき、
その人は傷つき、そしてその人が別のまた誰かを傷つけたら、負が連鎖を続けて、
巡り巡っていつか未来に生きる自分の大切な人を傷付けるかもしれません。
つまり、大切な人、大切なもの、大切な仕事、大切な環境を守りたいのなら、
自分と自分の大切な人さえ幸せであれば良いという感情を捨てなければいけないことに気がつくわけです。
自分の大切な人が幸せになるために、全ての人が幸せであるように祈ることが、平和の本質になるのだと思います。
そんなことは百も承知なんだけれど、綺麗事で苦しくなり、迷ってしまうことがあれば、
「へいわとせんそう」の最後のページを読み返してほしいと思います。
世界中のすみずみにまで祈りが連鎖を続け、これからの時代を生きる全ての人々が優しさで包まれれば良いと、真剣に願っています。
受付 中西