マラッカの白群の海「2017年アジア生殖医学会(ASPIRE)」
- 2017年4月4日
- 研究室
桜の花も咲くころとなりましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?
高度生殖医療研究所の中田です。
この3月30日から4月3日までマレーシアのクアラルンプールで開催されたアジア生殖医学会で2題発表して参りました。
アジアの生殖医学会ということもあり、日本人も含め、ほとんどがアジア人の学会でした。私の発表には、ベトナム、タイ、中国、スリランカ、どこの国かが教えてもらっても聞き取れない謎の国の培養士さんに質問をいただきました。英語もアジアの方々は独特なところもあり、よく聞き取れなかったりしましたので、ノートに書いて伝えたりしました。コミュニケーションをとることの大事さを感じさせられました。
卵子や胚の発表の多いヨーロッパやアメリカの学会とは異なり、精子の発表も多かったです。アジアの生殖医学会はヨーロッパ、アメリカとはまた異なる倫理観や宗教観、家族の在り方を考えさせられました。日本もアジアの国の一つではありますが、多くの違いを感じ、文化の違いは臨床、研究へも大きく影響するのだなと勉強になりました。
学会発表が終わり、マラッカに観光に行きましたが、海に向かって建つモスクにも連れて行っていただきました。熱い陽射しの中、目の眩むような青い青い青空と海に囲まれた白いモスクを見ました。とても綺麗だったのですが、このところ急激に視力が落ち、飛蚊症と目の前に星が飛ぶ症状がよくあるせいか、頭痛と吐き気がひどくなってしまいました。
なんとか収まった頃に、白に近い水色に少しの緑、少しの黄色の混ざったマラッカの海の色が見えました。あとで調べると「白群(びゃくぐん)」という色に近いことがわかりました。
http://irononamae.web.fc2.com/colorlist/wa.html
良かったらどんな色かを上記のHPで見てみてください。
白という字があるのに、青に近い色、というのは不思議なものだなと思います。
頭痛と立ちくらみが再開したころに、同僚の中国人の培養士が、中田さんコレは中国で効くんですよ!と言って、わざわざ探してこめかみに塗ってくれた薬。薬が効いたのか、彼女がそんなことをしてくれたのが嬉しかったからなのかはわからないですが、頭痛はだんだんと良くなりました。
マラッカには運河の近くにとても簡単な作り(平たくお伝えすると、ぼろぼろのプレハブの外壁がないような感じ)の家がたくさんありました。私の育った家にそっくりで(外壁はありましたが)、懐かしかったです。みなさんは想像できないかもしれませんが、天井が雨水で膨れて、ところどころの天井から水滴が落ち、今にも落ちてきそうな屋根、ドアの閉まらないドア、開けたら閉められない窓、夏はめちゃくちゃ熱く、冬は家の中でも厚着をしないと風邪をひく家。祖父は会社を経営していましたが、雨風しのげればどんな家でもいいのだ、というヒトでしたので、困ったことに言葉通りの家でした。
ヒトはたいがい見た目や学歴、お金、権力、住む家、で、ヒトを判断しますし、それは当然だと思いますが、おかげでたくさんいじめられました。しかしいつも祖父からは、家よりも見てくれよりも大事なのは人間性と裸になっても生きていける技術力と偽りのない友人だと言われました。マラッカの家を見ていて、そんな祖父の言葉を思い出すのと同時に、寺院の階段に座って、1本1リンギット(日本円で約30円)の笛を売る7歳くらいの女の子が誇り高く笛を上手に拭いているのを見ていて買わずにはいられませんでした。2本買ってしまいましたが、女の子からは笑顔もなく、私の目をじっと見ていただけでした。試しに吹いてみましたが、いい音は出ません。ちょっと吹いただけでいい音が出るわけがないのも当然と言えば当然なのですが。
文化や差別の中でたくましく生きる方たちと出会えて、話せて、日本人として学会発表できたことは私にとって、仕事としても良かったことですが、価値観や視点という点でもとても収穫の多かった出張となりました。
写真は学会発表の私とモスクと女の子から買った笛です。笛はあの女の子にはかなわないかもしれないですが、もう少し上手に吹けるようになりたいです。