ロングセラー
- 2016年11月4日
- 培養室
こんにちは。培養士の高井です。
新米のおいしい季節になりましたね。
この時期になると前に住んでいたところや仕事のことを思い出します。
一時期私は米どころ新潟に住んでいました。
新潟はお米もお酒も美味しく、2年で15キロも太るという恐ろしい体験をしました。
中越地震の復興ボランティアをした際に地元の方にいただいた、棚田でとれたコシヒカリのおにぎりの味は忘れられません。
新潟にいた頃は製薬会社のMR(医療情報担当者)をしていました。
お医者さんにお薬の情報を届け、自社の製品を適切に使用していただくお仕事です。
たくさんのお医者さんを訪問したのですが、そのなかで印象に残っている小児科の先生がいます。
その先生は新製品をなかなか採用しない先生でした。
扱っている製品の中に小児科領域の新製品があり、その先生にもご紹介したのですが、例にもれずなかなか採用していただけませんでした。採用されても、ほんのわずかな患者さんにしか処方していただけませんでした。同業者のなかでも噂になっているちょっと気難しい先生でした。
何度も通ううちにその理由を聞かせていただくことができました。
〝その薬がとても効果的なのはわかる。治験結果で安全性に問題ないことも理解している。だけど使う相手は子供。長い目でみると今は知られていない影響がでてくるかもしれない。発売されてもいつの間にか販売中止となっている製品はたくさんある。だからまずは昔から長く使われている信用できる薬を使いたい。それでどうしてもコントロールできない患者さんには新薬を使う〟
賛否はあるでしょうが、私は患者さん想いのいい先生だと思いました。
不妊治療にも通じるところがあると感じています。
体外受精は卵子と精子が出会えていない方に対して、とても有効な治療です。日本では20人に1人が体外受精で生まれているほど、多く行われています。一般的な体外受精の効果や安全性のデータは蓄積されつつあります。
しかし単純に卵子と精子が出会えていないことだけが不妊の原因でない場合、現在の技術はまだまだ不十分で、新しい技術の開発もさかんに取り組まれています。過去のブログにもありますが、幸いなことに当院には斬新な切り口で研究を行う研究部があります。画期的な技術の開発はこれまで体外受精がうまくいかなかった方にとって、大きな福音になることと思います。
そして長く行われている治療にも、大きな価値があります。
従来の治療を大切にし、どうしても無理ならば新たな技術を使う。そうであってほしいと私は願います。
そのために培養室では従来の治療の精度を最大限に高める努力が常に必要です。
技術をもっと洗練させて1%でも向上できるところがないかを探しながら、培養室のスタッフは日々働いています。