排卵誘発法について
- 2016年12月26日
- 培養室
こんにちは。培養士の越智です。早いもので今年も残すところあとわずかとなりました。
当クリニックの培養室でも年末に向けて少しずつ大掃除を進めているところです。
さて先月の話になりますが、11月3-4日に開催された「日本生殖医学会」に参加させていただきました。その際に私が所属していた大学研究室の教授や、培養士をされている先輩・後輩が偶然集い、ゆっくりお話をする場がありました。
今日本には約560もの不妊治療施設があり、施設ごとに治療方針や提供している技術、またその方法など、他院の培養士とざっと話していても違うことがたくさんありました。
今回は治療施設間で一番違いが出ると考えられる排卵誘発法について簡単にご紹介させていただきます。
一般的な排卵誘発法とその主な特徴は以下に示した4つに分かれます。
当クリニックでは①年齢・治療歴②ホルモン値③患者様の希望などを考慮し、どの誘発法が最適かを医師が判断いたします。この4つの排卵誘発法の大きな違いは「卵巣へ負担」です。たくさんのお薬を使用してたくさんの卵子を採卵すると、その分卵巣には負担がかかります。
特にAMH(抗ミュラー管ホルモン)が低い方は卵巣に大きな負担をかけたにも関わらず卵胞が育ちにくいため、完全自然周期や低刺激周期が有効な排卵誘発法となります。AMHの値からは卵巣年齢、つまり卵巣に残っている卵胞の数を知ることが出来ます。
AMHは年齢とともに下がり、年齢とともに卵子の質や状態も悪くなっていきます。そのため年齢が上がるに連れて卵子を正常に受精させることは難しくなってしまいます。そのうえ高刺激周期と比べ、完全自然周期から中刺激周期を主に扱っている施設では得られる卵子個数が少なくなります。当院の患者様の平均年齢は39.5歳と不妊治療施設の中でも高く、状態が良くない卵子と向き合って受精させなくてはいけない場面が多くなってきます。それにも関わらず、当クリニックでは受精率がふりかけ法で71.4%、顕微授精で81.2%と非常に良好な成績であります。また妊娠率でも新鮮1胚移植で25.7%、凍結1胚移植で44.9%と、日本産科婦人科学会のデータ(新鮮1胚移植21.2%、凍結1胚移植35.6%)を上回っております。これは当クリニックの技術力がはっきりと現れていると考えています。
患者様が一日も早く赤ちゃんが授かれるように、培養室一同これからもより一層精進して参ります。来年もまた宜しくお願いします。