研究というアドベンチャー的なお仕事
- 2020年12月11日
- 研究室
こんにちは。高度生殖医療研究所の甲斐です。
先日、今年の初めから取り組んできたプロジェクトを論文にまとめ、とある学術誌へ投稿しました。一区切りがついてホッとするのも束の間、受理されるまでは試練の日々が続くことになります。そんなことはしばし忘れて、今回は少しだけ「研究」という仕事についてご紹介したいと思います。
私の勝手なイメージですが、研究というのは暗闇の迷路を手探りでゴールを目指すようなものだと思っています。迷路の長さや複雑さは研究内容によって異なりますが、自分の目指すゴールにはまだ誰も辿り着いていないことが必要条件です。研究の世界では二番煎じはただの追試にすぎず、全く意味がありません。そして、同じゴールを目指しているライバルに負けないように一番でゴールに辿り着く必要もあります。そのように過酷な暗闇迷路に何の装備も持たぬまま挑むのはあまりに無謀すぎるので、研究者を志す人々は大学等の教育機関で事前準備をする必要があるわけです。大学の学部生を終えて入手できるのはせいぜい懐中電灯くらいでしょうか。これで自分の足元くらいは照らせます。大学院の修士課程を終えると方位磁針が入手でき、方向感覚が得られます。そして博士の学位を取得してようやく白地図の作り方を習得し、道筋をある程度考えられるようになります。しかしながら、この装備だけでゴールに辿り着くのはまだまだ困難です。そこで重要になるのが、先人達が冒険した記録である論文です。先人達が残した様々な情報を自分の白地図に書き加え、自分なりの道筋を明らかにして対策を練ります。もちろん引き続き修行も必要で、経験値と装備を増やしながらレベルアップしていきます。時には自分が持っていないアイテムや情報を有する仲間の助けを借り、ゴールを目指して四苦八苦しながら前人未踏の道を進みます。ゴールまで辿り着けずに途中でリタイアなんてこともしばしばですが、経験を重ねるごとにゴールへ辿り着く確実性は徐々に上がっていき、最短経路で且つスマートにゴールへ到達する術が身に付いてきます。こうして苦心の末にゴールへ辿り着いた瞬間というのは本当に格別です。まだ誰も見たことのない景色を世界で初めて自分が目にすることができるわけですから、これこそ研究者冥利に尽きると言いますか、その感覚を一度味わってしまうと抜けられなくなってしまいます。おそらく研究者はこの経験が忘れられないから、どんなに過酷な道であっても何度でも頑張れるのだろうと思います。
さて、冒頭の論文の話ですが、上記のように論文を書くことは研究者にとって非常に重要な仕事の一つです。私は生殖医療分野の研究をテーマにしているわけですが、もし私の研究が皆さんの治療に直接的には役立たなかったとしても、他の研究者が私の論文を参考にして新たな治療法や診断法を確立してくれるかもしれません。まるでバトンリレーのようですね。そして良い論文というのは多くの研究者に引用され、後世にまで残っていきます。自分の仕事を形にして後世に残すことができるというのも研究者の醍醐味の一つであります。
いかがだったでしょうか。私の個人的なイメージで研究という仕事を抽象的に紹介させて頂きました。国内のプライベートクリニックにおいて本格的な研究ができる施設は限られていますが、山下湘南夢クリニックには恵まれた研究環境が整っています。そして臨床と基礎研究の両方の視点を持てるということが当院の大きな強みです。当院の研究成果が生殖医療の発展に貢献し、皆様の笑顔に繋がることを期待しつつ、これからも研究に励んで良い仕事をしていく所存です。