第40回日本受精着床学会学術講演会
- 2022年8月2日
- 研究室
こんにちは。高度生殖医療研究所の甲斐です。
新宿の京王プラザホテルで7/28(木)-29(金)にかけて開催された第40回日本受精着床学会学術講演会で発表してきました。
演題名は「妊娠予測に基づくヒト胚盤胞の栄養外胚葉および内部細胞塊のトランスクリプトーム解析」で、少々難解なワードが並んでおりますが、簡単に説明しますと、妊娠期待率によって胚盤胞を3群に分けて遺伝子の働きを比較した、という内容です。
当院では、胚盤胞を「受精から凍結までにかかった時間」と「胚盤胞の直径」の2つの指標をもとに評価しています。2018年3月から2020年12月までに凍結融解胚盤胞移植を受けた1,890症例について、この評価法により胚盤胞を3群に分け、妊娠率との相関を後方視的に解析したところ、それぞれ59.0%、34.2%、16.5%と有意な差を認めました(p<0.001)。
この結果から、おそらくこの評価法には何らかの分子メカニズムが関わっているだろうと推測し、3群に分類した胚盤胞から内部細胞塊(着床後に胎児になる細胞群)と栄養外胚葉(着床後に胎盤になる細胞群)をそれぞれ単離して、RNAシーケンシングという手法により遺伝子の働きを比較しました。すると、内部細胞塊では26個、栄養外胚葉では67個の遺伝子に働きの違いがあることを見出しました。
これらの遺伝子がどのように妊娠に関与しているかについては、残念ながら今のところ解析することは不可能です。しかしながら、研究が進みつつある人工ヒト胚モデルが実現すれば、将来的にはそのモデルを使って、今回発見した遺伝子群の機能解析が可能になるかもしれません。このような基礎データを積み重ね、ゆくゆくは非侵襲的で、且つ科学的根拠に基づいた胚盤胞評価法の確立に繋がればと考えています。
この研究成果は、現在、論文にまとめて投稿中です。アクセプトされましたら、改めてご報告したいと思います。
せっかくの学会参加でしたが、感染が拡大中ということもあり、滞在わずか4時間程度で帰路につきました。発表して、ランチョンセミナーのお弁当を食べて、午後のセッションに少し参加した程度です。
対面でも気兼ねなくディスカッションでき、情報交換し合えるような日が1日でも早く戻ってきて欲しいものです。