第44話 再会
- 2024年1月26日
- 院長・医局
金沢市内に卯辰山という山があります。 その中腹に大きな墓地があり、私の親戚の墓もそこにあります。
正月に石川県を襲った地震で沢山の墓石が倒れていると人づてに聞き、墓のことが気になり、金沢に帰郷した際に様子を見に行きました。
2,300はある墓のそこかしこで墓石や灯籠が倒れて割れていました。
“これじゃあ、無事ではすまないな。”と思いながらも被害が少ないことを祈りながら墓に着くと、灯籠は横倒しになり割れて隣の敷地まで転がっていました。重く大きな墓石自体も大きくずれて揺れの凄まじさを物語っていました。
ふと、ずれた墓石の隙間から石棺をのぞき込むと、納められた骨壺が倒れて蓋がはずれ、こぼれ出た骨片がみぞれ混じりの冷たい雨に打たれていました。
それは、夭逝した親戚の青年との27年ぶりの再会でした。彼との少ない思い出が蘇ってきました。
“こんな狭いところにずっと居たんだね。”
心の中で呟き手を合わせました。
寒々と雨に濡れたお骨がとても不憫に思われ、翌日降りしきる雪の中をトングとビニール袋を持って再び墓に足を運びました。手の届かぬ石棺まで、ずれた墓石の隙間からトングを差し込み、横倒しになった骨壺を立てなおし、こぼれた骨片を拾い壺に納め直し、なんとか蓋を被せることができました。
そして、雨や雪が石棺に吹き込まぬようにビニール袋で隙間を被い、墓を後にしました。
多くの方が命を落とし、家財を失い、立ち直ることのできないほどに深く傷ついています。一日も早い復興のためにできる限りの支援をしていきたいと思います。
2024年1月26日 院長 山下直樹