第45話 ハードワーク
- 2024年1月28日
- 院長・医局
YSYCのスタッフの皆さん、YSYCに通院されている皆さん
少し遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。
2024年が皆さんにとってまずは無事で、そして実り多き年になりますことを心からお祈り申し上げます。
新しい年を迎えると書店に足を運び、その年の手帳を買うのが毎年の恒例になっています。机の引出しにしまわれた20冊近い手帳のページをめくると過ぎ去った月日の悲喜こもごもの出来事が蘇ってきます。ずいぶん昔のことも昨日のことのように思い出され、改めて時の流れる速さを痛感させられます。
“山下先生以外に生殖医療の経験のあるスタッフがいないのにうまくいくはずがない。万一うまくいっても利益が出るには2-3年はかかるだろう。資金も十分ではないのに一体どうするつもりだ。”と周囲から揶揄されていた中で、開院四ヵ月目から黒字になって安堵したこと。
連日の診療の過労がたたって電車の中で意識を失って倒れ救急搬送された時、夜間救急の医師の入院の勧めを断って、終電時刻も過ぎた深夜にタクシーで自宅に戻り、翌朝から何事もなかったように診察をしたこと。
学生時代からずっと続けてきたジョギングが、スキーで痛めた膝が年々悲鳴をあげ長距離を走ることができなくなったため、膝に負担の少ないスイミングを始めることに決めたこと。それから、多忙な診療の合間を縫って週に3回はスポーツクラブに通い、平泳ぎで25mしか泳げなかった私が、クロールで4000m泳ぎきったこと。その日の喜びはエクスクラメーションマーク付きで綴られています。
振り返ると、時間を無駄にせず、とても濃密に生きてきたように思います。
しかし、この2,3年の手帳には、近くが見えにくくなった。覚えたことをすぐに忘れてしまう。英語が聞き取れなくなった。など、以前はできたことができなくなった経験の書き込みが多くなりました。脳の回路が錆びついて繋がりにくく、時にはフリーズしてしまうことを実感させられます。
このような負の経験は、夢を叶えようとする気持ちや新しいことにチャレンジしようとする気持ちをボディーブローのようにじわじわと弱らせていきます。
多少の早い遅いはあれ、誰もが同じように衰えていくのが生物の宿命ですが、それはわかっていても、心が弱くなったなと感じさせられます。
しかし、人それぞれのベストを尽くして懸命に生きた時間が、その人の役立てる時間のピークを高めてくれ、その山が高いほど、下り坂に差し掛かった時から何もできなくなって無に帰すまでの時間を長くしてくれるのではないかと考えています。
ハードワークの記憶を糧として俯きがちな視線を前に向けて、あといくつかの夢を叶えていきたいと思います。
今年もよろしくお願いいたします。
2024年1月28日 院長 山下直樹