第63回日本卵子学会の参加報告
- 2022年6月17日
- 培養室
先日、京都で開催された日本卵子学会に参加し、タイムラプスインキュベータを使用した胚盤胞培養成績について口頭発表してきましたので報告いたします。
当院では、常に培養液やインキュベータといった培養環境を改善し、培養成績の向上を実現させております。その一環として、2020年よりタイムラプスインキュベータを導入致しました。インキュベータとは胚を育てる保育器のことで、最適な気層と温度が維持されています。従来のインキュベータでは、胚の観察の度にインキュベータの開閉が必要となり、インキュベータ内の環境が一時的に大気と入れ替わってしまいます。一方、タイムラプスインキュベータは内蔵されたカメラを用いて培養中の胚を撮影することから、観察時にインキュベータの開閉を必要としません。そのため、胚へのストレスをグッと抑えつつ、私たち培養士がお預かりしている胚の観察をできる優れもののインキュベータです。
一部、発表内容より抜粋してお話させていただきます。
下のグラフが胚盤胞培養の結果です。ふりかけ法でも顕微授精でもタイムラプスインキュベータで培養された胚の方が約10%も高い胚盤胞到達率を示しました。
成長した胚盤胞のグレードや胚盤胞移植後の妊娠率も従来のインキュベータと遜色ないことがわかりました。つまり、タイムラプスインキュベータを使用することで多くの胚盤胞が得られ、移植成績も良好であることから、1回の採卵あたりの妊娠率が向上するといえます。
4月から始まった不妊治療における保険制度では、タイムラプスは先進医療の位置づけとなり、治療に用いるかは患者様のご希望となります。当院では、タイムラプスインキュベータを使用されている患者様には、患者様の卵が成長していく様子の動画を見ながら解説する機会もご用意しておりますので、ぜひご利用ください。
培養部 越智