顕微授精法変更に関するお知らせ
- 2016年12月6日
- 培養室
寒さも厳しくなってまいりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
今回は当院で実施している顕微授精法についてお話しします。当院の不妊治療説明会に出席された方は既にご存知かもしれませんが、昨年よりSpindle Localization ICSI(SL-ICSI)という手法で顕微授精を行っています。
卵子が受精するためには、「成熟度」がとても大切です。成熟しているかどうかは、卵子細胞質の外に第一極体と呼ばれる小さな細胞が出ていることが目印になります(図1)。
卵子が受精する際、第一極体の放出に加えて染色体が「紡錘体(spindle)」と呼ばれる構造をとることが必要です(図2)。紡錘体が形成される時間、つまり精子を受け入れる準備が完了する時間は、卵子ひとつひとつによって違ってくるのです。
そこで特殊な光学機器を使用し、紡錘体を視認しながら顕微授精をすることで、卵子ひとつひとつの状態を把握し、受精のタイミングを正確に合わせることができます。当院ではSL-ICSIを導入し、徐々に対象者を拡げていきました。結果として、顕微授精の成功率(受精率)が、2014年では75.8%、2015年では80.5%、今年に入ってからは84.3%と、非常に良好な成績を得ることが統計学的に証明できました(図3)。
このため当院では、2017年から顕微授精を全例SL-ICSIにて実施することを決定いたしました。SL-ICSIでは、専用に特殊加工を行った製品を使用することが必要となるため、顕微授精料金の改定を行います。料金改定は、2017年1月実施分からとなりますので、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。
卵子の状態をしっかりと見極め、よりよい治療成績の医療を皆様に提供していけるよう、培養室一同は日々努力を積み重ねて参ります。
培養室室長 河野 博臣