2018年もありがとうございました(読売新聞11月30日の掲載より)
- 2018年12月9日
- 研究室
秋らしくない秋を過ぎて、北国では雪が舞い始めるこの頃ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?私はずいぶん遅くなりましたが、今日、やっと綺麗な紅葉を見ることができました。高度生殖医療研究所の中田です。
11月30日の読売新聞の朝刊で私の母校が記事になるということで、私は取材をいただき、大学時代の話、胚培養士の話、研究の話などなどをさせていただきました。実際に記事になったのはその一部でしたが、これから大学生になる学生さんたちが進路を決める際の参考にしていただけたらと思います。興味のある方がいましたら読んでみてください(以下をクリックしてください)。
私は以前の投稿にも書きましたが、明治大学農学部の発生工学研究室という、ブタやマウスのクローン動物や、顕微授精にまつわる研究をしている長嶋比呂志先生の研究室に所属していました。体外受精、顕微授精、卵子と胚の凍結など生殖医療に先行する技術を使い、動物の卵子や精子を体外発生培養し、胚を移植して、動物の赤ちゃんを得る、ということから、大学生活でとてもたくさんのことを学びました。その中で、私が一番心に残っている長嶋先生の言葉は「隙間の美学」でした。多くの研究者が行うトレンドの研究やニーズがあると誰もが思うことよりも、自分が好きだと思う、自分自身が肌で感じ今求められていると思う、自分にしかできないと思う研究を見つけ行うことの大切さ、を教えてもらいました。
私は、もともとは「たまごやさん(卵子や胚の研究を行う研究者を言います)」ですので、「体外受精」、「顕微授精」、「ピエゾICSI」、「卵子・胚の凍結」、「活性化」、「卵子若返りのための核置換・細胞質置換」、「分割胚や胚盤胞のバイオプシー」などを行って来ました。しかし、ここ5年くらいは「たまごやさん」と同時並行もありますが、「精子やさん」です。精子に関する研究、「水素処置によるヒト精子の運動性の回復」「極少数精子凍結デバイス「MAYU」の開発」「Y精子選別技術の開発」「精巣組織凍結法の開発」と来年以降に発表していく予定の精子の研究を進めています。ずっとやりたかったこと、自分がこれから大事なものになると思うこと、自分しかできないと思うことを始めるために、ずいぶんと時間がかかってしまいました。だけど、「たまごやさん」だからこそ、「精子やさん」に活かせることもあるんだなと改めて思います。回り道のようだなと思ったこともありましたが、回って良かったなと思います。
精子の研究を始めた頃は、精子の研究をずっと行ってこられた方には「中田さんは本当にわかっているのかな?」と思われたでしょうし、泌尿器科で男性不妊に携わっている医師の一部の方には「変わり者」のようにも言われましたけれど、「そう思われても仕方ないから勉強しながら頑張り続けてみよう」と思いました。今も同じように思いながら研究をしています。
仕事人生で考えるとあと半分くらいになってしまいましたが、研究を通して、患者さんに元気な赤ちゃんが生まれてきてくれること、自分の研究がどれかひとつでも未来に残って培養士やどこかの研究者の力になってくれることを願って、今年も残り最後まで、来年以降も目標をもって、目的のためにコツコツそしてガツガツ頑張っていきたいなと思います。
今年も1年間、温かい言葉をかけてくれた同僚、具合が悪いと点滴をしてくれた看護部のみなさん、いつも惜しみなく協力してくれる培養室のみなさん、たまに適当にあしらってくれる培養室長、仕事を任せてくださる山下院長に感謝しています。ちょっと早い挨拶となりますが、来年もどうぞよろしくお願い致します。
高度生殖医療研究所
室長 中田久美子