職人として生きる
- 2014年12月4日
- 培養室
皆様初めまして。
10月16日から当院で勤務しております、胚培養師の河野と申します。生まれは九州の宮崎県ですが、九州男児であるのにお酒は全然飲めません。以前は都内のクリニックで胚培養師として6年間勤務し、年間1000個以上の受精卵を扱ってきました。この度ご縁があり、山下院長の下で勤務する事になりました。
これまでに多くの患者様の卵子を扱う中で学んだ事、それは患者様の卵子一つ一つには個性がある事です。場面場面で素早く卵子の状態を把握し、適切な処置を適切なタイミングで行う事がとても大切です。しかしながら、卵子は元々患者様の体内に存在するものです。時間をかけてじっくりと慎重に操作を行う事が必ずしも卵子の為にはならないという、とても難しい匙加減があります。
学生時代に大変御世話になり、今は当院で勤務している私の先輩がいます。私が学生の頃、小動物卵子で顕微受精の練習をする為に、その先輩が研究に使用した道具を全てそのまま受け取りました。先輩と同じ様に、見様見真似でしたが、慎重に丁寧に操作を行いました。が、全く上手くいかない。半日頑張って数十個の卵子に顕微受精を行い、上手く受精したのが3個でした。
原因を突き止め切れないまま、後日結果を先輩に報告したところ、「んー、私がやるから見て。」と一言。言葉のやり取りは少なく、静かな部屋の中で、モニター上の操作に釘付けになりました。
卵子に注入するガラス針の角度、パルスの強度調節、ガラス針の穿刺位置、一つの卵子の処理速度…
まさに職人の世界でした。参考書に記された内容からはとても読み取ることの出来ない、細やかなポイントがそこには沢山ありました。(後日、私が扱っていたマウスの卵子は、実験動物の中で最も顕微授精が難しい種類だったと聞かされました。教官恐るべし…)
胚培養師として患者様の卵子を扱うことに大切なもの。それは最新の知識に裏付けられた判断力と経験、そして何より「腕」だと思います。患者様の卵子一つ一つに何処までもこだわりを持ち、背中で語れる培養師を目指して日々精進致します。
私たち培養師は、患者様の忌憚ないご意見がとても励みになります。卵子についてわからないことがありましたら、どんどん聞いて下さいね。
培養師 河野