横浜ART研究会参加報告|山下湘南夢クリニック|藤沢市の不妊治療/体外受精

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横浜ART研究会参加報告|山下湘南夢クリニック|藤沢市の不妊治療/体外受精

横浜ART研究会参加報告

培養室の河野です。
朝夕はずいぶんと涼しくなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

8月29日に第17回横浜ART研究会に参加してきました。横浜ART研究会とは、横浜を中心に生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)の分野でご活躍されている医師、培養士が集う勉強会です。17時開会でしたが、開会時50名程であった参加者は徐々に増え、会の終盤では100名程まで増えていました。他施設の皆様も忙しい中時間を作って参加しているようです。私自身研究会への参加は初めてでしたが、今回は聖マリアンナ医科大学の河村先生、高度生殖医療技術研究所の荒木先生を始めとした著名な先生方の講演を伺うことができました。

最近特に注目されているPGS(着床前スクリーニング)を中心にお話を聞いてきました。流産の原因の多くは胚染色体異常であることが知られています。このため、胚染色体の数的異常について移植候補胚を事前に検査し、問題のない胚のみを移植に用いることで患者様の流産リスクを低下させようというのがPGSの考えです。流産は当院が最も解決したい課題であり、もちろん生殖補助医療に携わる方々全ての願いでもあります。しかしながら、意外に思うかも知れませんが、PGSは未だ国内ではあまり普及しておりません。それはなぜでしょうか。

胚染色体異常は加齢とともに増加することはご存じかと思います。海外では若い時に採卵しておき時期が来たらお腹に戻す、という考えが広く普及しているそうです。一方日本国内で不妊治療をされている患者様は海外と比較し高齢の方が多いという事実があります。晩婚化が進み、結婚してそろそろ子供を…と思ったらなかなかできず、治療に踏み切るまでに年齢を重ねてしまっている方が多いのです。つまりは、年齢因子が治療の難易度を高くし、PGSの技術があったとしても、得られた胚を検査したら染色体異常が検出されてしまう可能性が(海外と比べて)高いのです。染色体異常が多く検出される上で何が重要か、それは正常であると確定的に判断し得る基準です。生存可能な染色体異常をどう扱うか等これまでに多くの倫理的な問題について議論がなされてきましたが、まだ足りないそうです。それどころか答えが出る問題ではないのかもしれないのです。異常または正常であると確定判断するシステムを構築する上では膨大なデータの蓄積を要するため、これまでにデータを蓄積してきている海外との連携が大切になってきます。

流産率の低下のためにPGSの視点からアプローチすることはとても大事だと思います。ESHRE等海外の学会もPGSに関する報告が非常に多いです。しかしながら、多くの患者様が不妊原因として年齢因子を抱えている国内の事情を踏まえ、染色体異常を少しでも起こしにくい媒精方法、培養システムを構築する事も非常に大事なことであると感じました。