第15話 夏の終わりに|山下湘南夢クリニック|藤沢市の不妊治療/体外受精

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第15話 夏の終わりに|山下湘南夢クリニック|藤沢市の不妊治療/体外受精

第15話 夏の終わりに

窓の外にはヒグラシの声が重なり今年の夏も駆け足で通り過ぎようとしています。

6月 YSYCはWorld Visionのチャイルドスポンサーシップに参加し、タンザニア、バングラディシュ、エルサルバドル、ラオスなど世界中から10名の子供を選び支援していくことにしました。私が3人、スタッフ有志7人が残り7人の子供を1名ずつ選んで決めたのですが、早速子供たちからお礼の手紙が届きました。スタッフもそれぞれが心のこもった返事を返し、遠く離れた異国の子供たちとの心の交流が始まりました。

私の長年の夢のひとつに貧しい子供たちが無償で通える美味しいランチ付きの学校をカンボジアかラオスに建設するというものがあります。しかし、時間的にも資金的にも実現はまだ数年先のことになりそうで、その間にも貧困のため夢を失っていく子供たちが大勢いる現実を何とかしたいと思いchild sponsorに参加することを決めたわけです。見知らぬ国の見知らぬ人々、おそらくこの先も一度も会うこともない子供たちが自分たちの夢に向かって険しい道のりを歩き続ける勇気を微力ながら応援する―そう考えると心が湧き立つようなロマンを感じます。毎年支援する子供を増やし、YSYCのスタッフ全員がそれぞれ一人ずつ子供をサポートしていけたらと考えています。

支援や援助はすることよりもし続けること、継続することがずっと難しいことです。3歳から10歳の子供たちが自分たちの夢を実現し、希望に溢れた人生の第一歩を踏み出す日まで息の長い応援をしていきたいと思います。

 

7月 第32回ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)がフィンランドのヘルシンキで開催され、YSYC高度生殖医療研究所の研究が去年に引き続きポスター発表に採択されたため出席してきました。フィンランドは冷涼な国土の大半が深い森と無数の湖に覆われ、マリメッコ、イッタラなどの工業デザインやムーミンが有名な国です。人々はとても親切で、全身タトゥーのお兄さんに道を尋ねても、ついて来いと言って目的地まで案内してくれました。

学会場には世界中から2000人を超える医師、研究者が集い、1000人は軽く収容できる大きなメイン会場では活発な研究発表が行われていました。また、チャリティーランと銘打って会場周辺の5kmのコースを走るジョギング大会も開催され200名近い俄かランナーが参加し汗を流しました。YSYCからも精鋭3名が出場しました。結果はともかくとして、各自の良い思い出になったと思います。

学会の合間にヘルシンキ近郊の森の中に続く静かなトレイルを散歩しました。徒に人の手を加えすぎず、ほどよく手入れされた静寂の小径を歩いていると、知らず知らずに心が澄んできて、私の見果てぬ夢である―ESHREのメイン会場の壇上に立ち世界の研究者を前に研究成果を発表するという夢にもう一度チャレンジする勇気が湧いてくるような気がしました。思考力、記憶力、語学力そしてなにより気力、体力すべての力の低下を感じざるを得ない昨今ですが、そんな風に思えたことがフィンランドに行った一番の収穫かもしれません。

 

8月 治安や予算で物議を醸したリオデジャネイロオリンピックが開催されました。才能と努力する心のふたつを兼ね備えた世界中のアスリートが4年という雌伏の期間を経て、満を持して臨むオリンピックはやはり特別なイベントです。様々な競技に多くの感動的な場面が散りばめられていました。また、水泳、体操、卓球、バドミントンや陸上など日本勢の活躍も著しく、彼らの健闘に魅せられ深夜まで声援を送りました。

“今まで支えてくれたすべての人にありがとうとお礼を言いたい。”

メダルを取った選手が口をそろえてインタビュアーにそう答えるのが私にはとても印象的でした。周りの人々の温かい応援を糧に、日夜たゆまぬ努力を積み重ねて道を極めた人は、自慢とか横柄とかではなく、感謝とか謙虚という清々しい心境に到達するのだろうと思いました。

もうひとつ印象的だったのは吉田沙保里さんが出場した女子レスリングの決勝戦です。彼女は世界選手権とオリンピックを合わせて世界戦16連覇、個人戦でも200連勝している絶対王者だそうです。そして、リオではオリンピック4連覇という女子では誰も成し遂げたことのない偉業の達成を目指していました。しかし、不覚にも決勝戦で敗れてしまいました。

共に歩んできた亡き父との約束、多くの人々からの期待、勝利の瞬間のために費やしてきた膨大な時間、そして流した汗と涙、虚脱した彼女の脳裏に溢れるばかりの様々な思いが駆け巡ったのかもしれません。彼女は人目も憚らず“お父さんに叱られる”と言いながら泣きじゃくっていました。彼女の姿は確かに涙を誘い、心を揺さぶるものでした。

しかし、できれば、試合終了のブザーが鳴った時、相手選手に歩み寄りハグしながら

“You’re awesome!    You did it!”

とか相手選手の耳元でささやき、静かにリングを後にして控室に戻り、人知れずとことん涙を流した方が、彼女の成し遂げてきた偉業には相応しく、かっこよかったんじゃないかと凡人の私には思われました。

 

様々な人々の様々な思いとともに2016年の夏は終わろうとしています。

2016年8月30日 院長 山下直樹